このレビューはネタバレを含みます▼
杉本は最初から最後まで捕食者から自分を守っていただけ──しかし、怠惰で偽善的な性格が仇となった。三浦を経ち切れなかったのも、罪悪感を持ち続けられない弱さだ。優しさは微塵もない。
誰だって罪滅ぼしをして楽になりたいという思いはあるはず。でも・・・それが悲劇になった。
罪悪感から救われたい杉本が与えるものを口を開けた雛の三浦は喰い続ける。心をくれないと満たされない。ループ。
自尊心というものは、親の自己愛による過保護からも、誰もいない虚無からも生まれない。母親から愛撫され、弁当を作ってもらって、叱られ、慰められ、自分を雑に扱ったり、いなくなると悲しむ人がいるという確かな実感と共に育んでいくものだ。自分を大切にするために必要な自己愛。人を愛せるのはその次だ。
それを与えてもらえなかった三浦は、誰かから奪って喰わなくてはならない。でないと熟す前に腐る。敵に喰われる。生存本能だ。それに対する杉本の防衛本能。子供の頃、危機感に従ってはっきり三浦を拒絶できる性格だったら、杉本は選ばれなかっただろう。
ただ一人に愛されていると信じて育った少年期──出会わなければよかったなと言った三浦は、もしかしたら奪う苦しみから逃げようと、逃がそうともがいて、結局敵わなかったのかもしれない。それはなけなしの自分への愛と、杉本への愛だったのかもしれない。