白百合を拾った大富豪
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白百合を拾った大富豪

レイチェル・ベイリー/松本夏実

難解な物語を理解するのに苦しんだ

ネタバレ
2020年3月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヒーローデイモンがヒロインリリーにひた隠しにしたものは、ゲス叔父から受けた虐🆖の事実、それに対する憎しみからの復讐ゲームだ。その為に表面的には叔父に服従姿勢を見せておく必要があると彼はリリーを利用したのだ。本作の中で彼は、自分自身を餓鬼となって目標を達成しようとする姿を リリーを聖母と置き 対照的に捉えていて これは、自虐行為であるので 自分の行動の真髄は理解されていると分かる。しかし、復讐というのは その相手となる叔父が悔しがっているのを見るのが成功なのであって、その前に亡くなってしまったのだから、会社の買収に成功しても 復讐は失敗している。そう、ここにこそこの物語の本意が有った。彼は勝者になりたいだけ 自分の力で叔父から会社をもぎ取るのが目的で、それを復讐と名付けていたにすぎないのだ。自分の力を見せつけるために。どうして、デイモンの悔しさが描かれていないのかが不思議だった。それを理解するのに10回以上は読んだ。低評価のレビューも書いてしまった自分の理解力の乏しさに落ち込んだ。そうだったんだと分かった時、デイモンも復讐という言葉に囚われていたのだと分かった。全ては、叔父が亡くなったと同時にリリーが彼のもとを去った時に。けれど、叔父が亡くならなければ分からなかっただろうことも理解できる。それほどに辛く悲しい少年時代が彼に暗闇を齎していたのだから。p101の愛情は彼の憎しみを越えられなかったというリリーの嘆きが理解できた。目前に積み重なった大きく硬い岩が無くなってみなければ、洞窟の外に太陽の光が降り注いでいるのかは分からないのだ。そうしてみるとリリーの忍耐と許しの聖母の輝きがよく分かった。だからもっと私の様な読者にもわかるような デイモンが暗黒世界からの脱出を リリーを求めるその作画を差し込んでほしかった。
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