ベッドとオフィスで違う恋
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ベッドとオフィスで違う恋

キャシー・ウィリアムズ/湊よりこ

ヒロインはあざとく「愛」は無しか?

ネタバレ
2020年3月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヒロインエリザベスは、ロンドン市内で弁護士秘書をしていたという経歴を持つ女性という設定なのに、邸を訪ねてきた時の服装を鑑みると かなり田舎臭くだらしない格好に見える。これは、財産目当てに(お金を恵んでもらおうと)みすぼらしく装ってきたのではないかという疑惑を持った(私の杞憂だったが)。屋敷での滞在日数が明らかにはなっていないが、ヒーローアンドリアスは「調べればわかる」としながらも彼女の身辺調査を行った気配も記述も無い。これはどういうことか。27人というとんでもない数の派遣介護士を面接によこしておきながら採用せず、いきなり訪ねてきたエリザベスを採用とは片腹痛いが、ジェームズの好みの顔の若い女性が採用の決め手と推測する(かつての浮気相手との既視感を理由に)。このことが、私をひどくイラつかせるのだ。現在の日本の介護士の女性達に横行する介護老人からのセクハラやパワハラといった実情をこの事象の中に見つけてしまったからだ。また、アンドリアスにあっては、使用人のプライベートもプライバシーも蔑ろにする横暴さと傲慢さにはエリザベスが「ベーッ」と舌をだして意思表示する軽度の問題ではない。モラハラだ。この物語の流れには 全てにおいて屋敷内の男2人に彼女が翻弄されて良いように弄ばれている作りがされていて(関係は和カンであるが)、納得いかなくて腹が立つ。本作の意図は分かる。ジェームズにしてみれば息子同然のアンドリアスが早く結婚して子供を作ればいいと考えていて、自分が認める女性がいてこれ以上良縁は無しと考えているから、既成事実の一つでも作ってしまえば 自分がゴリ押しして結婚に持ち込んでやるという計画なのだろう。エリザベスだってまんざらでもなさそうだし というところ。勿論これがこの物語の本髄だからその通りハピエンへと事は進むが、エリザベスが邸を訪ねたことの真意を隠すことで、振り回されてしまったのも頷けるが、アンドレアスの好みの女性はスレンダーだったはずなのに宗旨替えはなんで?読後感の悪さは払拭できず苛立ちを大きくした。
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