幻のシャトオ
」のレビュー

幻のシャトオ

サラ・クレイヴン/山口美由紀

もっとロマンス要素が欲しかった

ネタバレ
2020年3月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ ハーレクインで山口美由紀さんが担当した前の作品が良かったので購入したけど、総合的には前作の方が良かった。
今回は過去の事件のあれこれがあったりで、後半はページが足りなくてバタバタ詰め込んだ感じに。結果、ロマンス要素もさらーっと流れてしまった印象を受けた。ヒーローとヒロインの間にもう一個か二個、ときめくエピソードが欲しかった。
ヒロインを育てた叔父叔母のエピソードやら、屋敷を変えようと奮闘するヒロインが放つ明るい空気、ヒーローが時折見せる優しさ、可愛い甥っ子の様子、物怖じしない下宿人や気のいい使用人たちと試し読みの時点では、非常にいい雰囲気で進んでいたので、ラストへ向けての期待が大きすぎたか。

ヒロインのライバルは、甥と別れた時の笑顔からすると本当はいい人にしたいのかもしれないが、やってることがアレでは最後に可哀想な人感とか出されても微妙。嘘の伝説を甥に吹き込んで脅かす。思い出のソリを壊す。事実と反対のことを告げてヒロインを追い出そうとする。このあたりは序の口だけど、甥の閉じ込めは、あの時、甥が歌わなかったら一晩放置もあり得たのでは?
ヒーローの気持ちを確かめるためとはいえ、ただ浮気するだけでなく、よりによってヒーローの弟とというところも、個人的に受け入れにくい。浮気を告げてヒーローが怒った場合、よほどのことがないと破談確定。ヒーローは弟ともこじれて完全に家を捨てそうなんだが。自分本位の考えなしで酷い。
ただ、ヒーローとどういう経緯で婚約してたら、ライバルが浮気したあとのヒーローの態度に繋がったのかわかりにくく、ここのあたりはもう少し補足が欲しかった。ヒーローの性格的に関係を続けるために怒りを自制しただけかもしれないし、諦念かもしれないし。ただ、そのままヒーローと結婚したとしても、浮気相手が弟ではそのことを思い出す機会も多くて、嫉妬しようがしまいが、結局うまくいかなかっただろうな、この二人。

しかし、一番理解不能なキャラはヒーロー弟かな。借金を作って保険金目当てで自宅に放火するような馬鹿なのはわかるが、妻の妹であり兄の婚約者の女性と寝るとはどういう神経なんだ。しかも兄には結婚していないと後見人にはさせない? その上、兄の心に、自 殺を止められなかったという心の傷まで負わせる死に方をするとか最悪な弟だった。甥には真相を教えたくないというヒーローの言葉が改めて響いた。
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