このレビューはネタバレを含みます▼
コミック版を読んでいくつか気になった点を確認してみたくて購入。
ヒロインとヒーローが契約結婚し、元婚約者の妨害を受けつつ、甥の心を解きほぐし、ヒーローの心の霧も晴れて、本当の意味で結ばれるという大筋はコミック版と一緒だが、細かい点で結構差異があった。
コミックではヒロインは従妹の代理人としてフランスに来ているが、小説では従妹の名を騙り従妹が交わした契約書類を奪うために来たことになっている。ただヒーローはヒロインの正体を知っていたので、コミック版の変更はありか。
ヒーローはコミックでは不義の子だが、原作にその記述はなく父に嫌われていただけとある。死の順番も父が先で、弟が後になっている。
一番の違いはヒーローの元婚約者のシモーヌで、コミック版だとヒーロー恋しさのあまりにヒーローの弟と寝たといった描写が入って悲劇要素があったが、小説ではそんな要素は皆無。シモーヌはひたすら金目当てで、ヒーローと別れたのも、顔に傷を負ったというだけでなく、ヒーローに金がないとわかったため。弟が自 殺紛いのことをしたのもシモーヌがそそのかしたせい。甥がトラウマを抱えそうになっているのに嘘の童話を吹き込み続け、最後には凍死もありえそうな状況に甥をがっちり閉じ込めて自分は去るという、コミック以上に悪意満載な女性だった。
シモーヌの取り扱いは原作のままで良かったと思う以外は、コミック版の方がヒーローの優しさの描写がプラスされていたり、ヒロインも身分を偽ってなかったためか、初めから本来の自分を出せて前向きだったり、甥も子供らしい可愛さが出ていてよかったと思う。何よりヒロイン叔父一家のエピソードは完全にコミックオリジナルで、ヒロインが守ろうとする説得力が段違いによかった。
でも、ラブシーンは匂わせ描写のみではあったが、原作の方が濃厚だったか。まさか初夜で結ばれてたとは思わなくてびっくりした。
原作ではヒロイン視点オンリーなのもあってか、ヒロインが一人でぐるぐる悪い方へ考えがちなところやヒーローの気持ちが本当にわかりづらいところがマイナスだったかな。
しかし、ヒロインは21歳なので、ぐるぐるしてしまうのもやむなし。それよりは30代後半らしいヒーローの優しさが不足しすぎな気がした。若い娘に夢中な自分が恥ずかしかったのだろうか。
使用人二人と下宿人は原作もコミックもいい味出しててよかった。