見えない星
」のレビュー

見えない星

京山あつき

随所随所、深いナレーションが心に刺さる

ネタバレ
2020年4月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 引田2年、今井3年の一年間。二人の仲は深まるばかり。外からの障害は何もない。ただ甘々な展開でもおかしくないのに、この作品は全然違った。胸が詰まるように切なくなった。先輩の背中が遠ざかる不安感や、求められることで埋められる安心感、男としての自分への自我など、引田のいじらしい愛情と葛藤がひしひしと伝わった。個人的には、宇宙まで感じられる二人の年越しが名シーン。それから、なんてことない焼き肉屋のシーンで不意に「おれたちはまだまだ子供で(中略)想像と聞いた話と現実と、混ぜこぜにした世界に住んでいる」と挟まれるナレーションも心に残る。子供でも大人でもない、曖昧で危うく、可能性に満ちた高校生という時間の尊さを、ぎゅっと感じられる作品。
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