僕のパパになってください
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僕のパパになってください

緒川千世

子供時代のやり直し

ネタバレ
2020年4月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 皆さんのレビューを見てから読んだので、ジャンルに混乱せずに読めました。レビュー必読。

主人公の問題に限らず、いろんなわだかまりがあって実の親とあるいは子供と、疎遠ということはあると思います。
それを他人だからこそできるやさしい距離感と、冷静な思いやりで、互いに癒していくストーリー。実の親子だとこうはいかないんだよなあ。

たしかに子供時代に甘えられなかったり、学生時代、若い頃の日々に傷やトラウマがあったりすると、大人になってからその思いに蓋をしつつも、それらをやり直すことで過去の自分を乗り越えようとすることって、あるなあと思います。
私も実の父に叶わなかった我儘を、結婚してから旦那にしているなあと、自分のことのように思いました。

パパの煙草を吸う姿から、思い出の中の父ではなく男を感じてしまうあたりの葛藤がもうすこし見たかった。このあと立ち直って新たに彼の人生に向き合うとしても、このまま関係が進んでしまうとしてももうちょっと。

よかったのは、安易にパパ側の事情が見えすぎなかったこと。
普通に暮らしてると相手の考えは吹き出しには出て来てくれないし、ページをめくっても勝手に見えてはくれない。
相手の態度や、相手が語ってくれる言葉によってのみ、その過去や、事情や気持ち、距離感を測れるもので、その見えなさがときに不安を煽ったり、逆に安心感を与えてくれたりする。

他人てそういうものだし、ましてや”父親”の人生、気持ちや事情なんて、実の親でも知らないことがたくさんあるのだから、”パパ”の人生が見えすぎない、というのは物足りなさを感じる人がいるかもしれないけど、世界観の設計としてとても大事だと感じました。
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