幼女戦記
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幼女戦記

東條チカ/カルロ・ゼン/篠月しのぶ

幼女に見えるけど見えない

2020年4月27日
幼女に転生するお話です。面白くて世界観にドップリ浸かっちゃったのでちょっと寄せた口調のレビュー書きます(笑)。
舞台は第一次大戦と、第三帝国が跋扈する第二次世界大戦前期が合わさった様な似非なる異世界。
ただ、第一次世界大戦は行われておらず異世界固有の年代である。
そんな戦争に明け暮れる非合理的な時代に、文明を重んじ合理的で功利的であろうとする堅物中間管理職が神によって幼女に転生させられる。
しかし、主人公は転生後も幼女風の話し方や仕草をしないため、私は幼女だと思ったことがほぼない。
作品中、色んな士官が、とても幼女だとは思えない、幼女ということを忘れそうになるといった台詞を述べるが全く同感である。
第三帝国とあえて書いたのは、神にクソッタレの意思を持つ主人公への皮肉だ。
その言葉にアレルギー反応を起こす読者も多いだろう。
私もかつて読み始めの頃、歴史を把握しているにもかかわらずあのライヒ(帝国)に範たる軍人であろうとするとはなんたる非人道的作品だと憤慨しそうであった。
しかし、多大なポイントを犠牲にしつつ前進していくとまんまとドクトリンにハマっていることに気付く。
地理、特性は完全に現実のそれだが、これは完全なSFであると叩き込まれるのだ。
あたかも新兵がそれまでの常識を非論理的訓練により初日に全て放棄させられるようである。
そもそも戦争に魔導師という要素を入れたら現実感などあろうはずがない。
人が空飛んで魔導で防御壁を展開しつつ戦闘だって?
そんな世界線にこちらで糾弾されたものを重ねるのは非合理的であろう。
すなわち完全に地形と風習がわかりやすいだけのユニーク異世界戦記である。
とはいえ、思想がゼロというわけではない。
戦記モノを濃くすれば耐えられない者も多いだろう。
しかし、それを乗り越える者もいる。
そんな読者にとってみれば、
なんのことはない、その世界観にどっぷりハマって楽しめば良いだけの簡単なお仕事。
なお、巻を追うごとのヴァイス中尉の成長好き、と付け加えておく。
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