侯爵と見た夢
」のレビュー

侯爵と見た夢

有沢遼/サラ・クレイヴン

なぜそれを言わない

ネタバレ
2020年6月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ そんなことあるかい、というのがポツポツ。
HQあるあるの、彼が自分が何者かをはっきり言わずに別れた。けれど、犯罪者あるいは殺人者と思うくらいに、信じてないわけだ。笑い話でなく。だめ押しの弁護士事件への疑いも最後まであったわけだし。

このストーリー、ヒロインが息子を可愛がるのはわかるんだけれども、「育てている」当事者である描写が印象薄い。

周囲の思惑で二人が仲を引き裂かれた格好だが、二人が会う手段はひとつではない。彼は自分のことはいわなかったけれど、ヒロインのことなら、わかっていたのだろうが。

ヒロインが突然飛び込むのも、繋ぎとして、心境の変化を描写で納得させられてからの方が良かった。

女主人云々も使用人トラブルにまつわる状況説明をされた割にドラマを感じにくかった。
「真相」暴露と、担ぎ出された面々の勢揃いは、今さら、だ。その前まで伏せていたのに、ヒロイン登場で理由自体は浮上したとはいえ、例のかたは何の権利を持っている?

序盤の、予期せぬ再会に、ショックでクラッというのも、やれやれだ。以前誰かが、そんなに女性が倒れるものではない、と語っていたがその通り。ある往年のハリウッドの大女優が言っていたのを思い出す。長く女性は映画で添え物扱いで、泣くか倒れるか、そんな役しかさせてもらえず、よりストーリーの重要なパートをいつもやりたかった。させてもらえる時代が到来しつつある(読んだときはまだ米国も 、今より頑固な男性社会だったから )のを嬉しく思う、と。
ストーリーで、ヒロインの職業は彼との出会いと再会とに利用されているだけ。

ヒロインには両親がいるのに、結婚式立ち会いに母は欠席で、それで、父親のほうは?


話は二人の愛情が曖昧なまま終始した。「実は愛している」は分かってるから、そこの相手の核心をどう掴むか、もっと盛り上げ場がないと。
互いに思っていたのに、外野が駄目にするのは珍しくはない。そこからなのだ。HQの見せ所は。

愛してると言って欲しいのはわかるけれど、 HQヒロインの言われたがりも、時にウンザリする。言われてから安心して自分もやっと相手に口にするなんて、私には自分可愛さのずるいやり方に見えてしまうことがある。
サンドロは完全なる被害者だと理解したら、彼女は彼の3年間をもまた思いを馳せられるんだろうか。(3回目位に読むときに相手視点で読むのが私の趣味なので)
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!