潔く柔く
」のレビュー

潔く柔く

いくえみ綾

昔読んで

ネタバレ
2020年6月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 続きがあったことを知って再読しました。
オムニバス形式ですが、メインはカンナとハルタ、カンナとロクのお話です。15さいで亡くなってしまったハルタと、ハルタの想い人である幼なじみのカンナ。15さいのカンナが一体誰を好きだったのか、最後まではっきりとは描かれていません。色んな方向に受け止められる形で描かれています。
何度か出てくる回想シーンで、ハルタが言った「好きな女乗せよう」に対して、「二人でどこまでも行こう」という希望の言葉を言えなかったことを後悔しているというモノローグの場面があります。これは、言ってあげられれば良かったのにという後悔。ハルタを好きだったら言えていたのだという意味だと思います。
でも、嫌いだったはずはなく、幼なじみとして友達としては充分好意を持っていたカンナ。ハルタの気持ちに気づいていたのに、はっきり好きと言わないハルタに対してどうしたらいいかわからない戸惑い、どんどん大人びていくハルタに気持ちがついていけなかった、という思春期らしい気持ちだったのではないかと思います。きっと、事故で亡くなっていなければ、ハルタがカンナに好きだと言っていたら、この関係が20歳を過ぎても続いていたら、、、たらればですが、きっとその頃にはカンナもハルタを好きになっていたんじゃないか、それくらいこれから育っていくような小さな好きという気持ちをひっそりと自覚せず、15さいのカンナは持っていたんじゃないかと思いました。
叶わないまま亡くなったハルタも、気持ちに応えてあげられず後悔しているカンナも、両方が切なく、でもロクちゃんの「ちゃんと思い出してやれよ」の言葉に読者も救われるお話です。読んで良かったです。
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