このレビューはネタバレを含みます▼
時代背景と物語の設定が、大変しっかりしていた為、ただの空想的な王様お姫様の少女漫画的な物語ではない。最初、読みやすい文章だなと読み始めたが中々次の展開が気になり一気に読んでしまいました。あとがきを読んで実際の史実を元に物語を展開された事とあり合点がいきました。ネタバレですが主人公のベルタは、自身の育った環境も考え方も違う伝統的な王室で、仲睦まじい国王夫妻の間に政略結婚の第2王妃として嫁ぐ。国王からは女として妻としての慈しみもない形だけの初夜3日間で王子を妊娠してしまう。主人公の第2王妃のベルタがそんな中で、冷静に自身の立場、周りの状況を判断し卑屈になることもなく、浅はかな扇動的な言動を取らず前向きに自分や自分に使える又は慕う者達を守りながら様々な事を知恵と勇気で前に進んでいく様は気持ちがよかった。ただ、国王と主人公が生まれ育った環境は相容れないくらいに違い、そんな中で自分の価値観で国王の考え方とのギャップにどう寄り添っていくのか、反発して乖離していくのかの2人の心の移り変わりや行動の変化も楽しめました。この物語で一番努力し変わったのは国王のハロルドであり主人公のベルタより頑張ったねと言いたいです。正妃のマルグリットもですが、長年培われた価値観や人生観はそう簡単に変われるものでない。どの時代も時としてそのままでも安寧に暮らせ賞賛される時もあるが、真面目なほど悲劇の流れに飲み込まれる時もある。時代によって正義と悪の尺度が変わる。そんな悲哀を登場人物達に感じました。これで完結もありですが、主人公のベルタと国王ハロルドの夫婦としての男と女の機微が見えたらなと。ベルタは、どちらかといえば合理的な資質が強いが、男と女の愛の優しさや愚かさも知ってどう変わっていくかも人として成長がある。そんなベルタに対して国王ハロルドは?続き欲しいですね。