このレビューはネタバレを含みます▼
正直、絵はかなりざっくりした感じでそこに惹かれたわけではないです。甘えん坊御曹司系の溺愛なんて珍しくないし、実は凡人のヒロインも珍しくない…つまり、設定は平凡なんです。が、なんかそこここに捻りがあるようで、そこに興味を持ちました。
流さんの家庭事情は桁外れの富裕層らしくかなり残酷な感じが垣間見えて、呑気な可愛い絵柄とセリフに時々、突然、スパイスのように狂気が見えます。しかも飛び級して21歳で企業を率いている様子、女慣れもしまくり、と、流さんは(言われてないけど)天才児なんですね。その彼が初めて心を動かされた女性を独占したくて見せる行き過ぎた独占欲求。対する亜衣ちゃんは、孤児の身の上で、愛され大切に養母義妹に育てられも尚、折々に遠慮と自信のなさが顔を覗かせる。
そういう2人なので、実の家族への憧れを持つ亜衣が目にした実父へナイフを向ける流、という図は衝撃だったのでは。ここ掘り下げても面白かったかも、と思います。
こういう皮肉な組み合わせが、時々2人のすれ違った感情となって出ているようです。この点をあまり重く取り上げてはいないので全体として軽快で読みやすいTL作品ですが、実は作品の隠れた魅力になっていると思います。
今後、心のつながりなどに焦点が移っていくのかもしれませんが、その中で実父と安易な和解などせず、ちょっとだけスパイスの効いたストーリーで進んでくれることを期待します。