無垢な薔薇のめざめ
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無垢な薔薇のめざめ

ナタリー・アンダーソン/荻丸雅子

久々にハーレクインの空気を吸いに来たら

2020年7月18日
珍しく邦題がピント外れではなく、実のある表現。ヒロインは素敵な楽園での日々を、求められるまま、しかし自分からいつでも手を切る気持ちで彼と過ごした。
ひとときの遊びと互いに割り切るつもりがーー、というところ、この種のロマンスの定番なのだが、本作は彼の胸中を初めからちょくちょく出して来ているので、意外に彼の方がのめり込んでるのが読み手にはわかっており、それでも戯れで片付けようと頑張る彼の意固地さの氷解が、そこにヴィラへの暗い執着と被り、うまく作っている。

そうだよね、何故か、意地悪した方ってのは、覚えていない。笑いかけられたりされると実生活で面食らう。
でも、私は、寛容ではないから、過去を許さないけどね、って、思ってしまった。

ヴィラでの二人の楽しい日々が、内容は実はセクシーなのだが、荻丸先生の筆致はあっけらかん、HQコミックはこれでいい、と思った。

しかし、パーティに着ていったドレス、西洋という舞台を踏まえて大胆で思わせ振り、描きようによってはいん靡極まりなくなった。ヒロインをいただこうと思っていた彼の空振りと対照的で明るい。きみはとても甘いいい匂いがするね、と言われたヒロインが「ペストリーの香りかも」と返すのもいい。サバサバした作風であることが、別れのあとの彼の未練を、彼のキャラで重くさせないように、間接的に働きかけている。ヴィラ購入で見せたこだわりから思わせる彼の粘着体質連想で、作品が彼のヒロインへの執着を必要以上に強く打ち出してしまわないよう、救っていたように思う。

原作は相当セクシュアルな展開であっただろうなと思わせるが、HQ コミックはその描写が幅をきかすと感動を削ぐこともある。総ページ数が格段に多い小説と比べるのはちょっと無理がある。


しかし、誘拐行為は親権を争ってのことと思うのに、裏切り者かぁ、母親の感情は愛情は無いのか、解らなくなった。
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