パブリックスクール
」のレビュー

パブリックスクール

樋口美沙緒

深く濃く苦しい

ネタバレ
2020年8月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ エド×レイのお話だけを全部読みました。
前半のレイがとにかくかわいそうで読むのが苦しくて。この先、どういう展開になってもレイのこの苦しみは報われないのでは?と心配しながら読んでいましたが、あさはかでした。
人は成長する。時間は流れる。状況は変わる。
そんな当たり前のことによってこんな展開になっていくとは。ほんとに感動しました。
すべてがすっきりクリアになるわけではありませんが、そこにたどり着くまでのレイとエドの苦しみや想いがずっしりと伝わってきました。
「ロンドンの蜜月」の巻はどこが蜜月だ?と言いたくなるような重く苦しい出来事がレイに延々と降りかかり、読んでて途中でくじけそうになりましたが、これもまた重厚な結末に納得でした。
読むのは正直ちょっとしんどかったけど、ぐうっと心に響きました。これは書くのも大変だっただろうなと。素晴らしい作品をありがとうございました。
素晴らしい作品ですが、メンタルが健やかな状態で読むのをおすすめします。

スタン×ケイト編をようやく読み終えたので追記です。
エド×レイほどは重苦しくはないですが、ずっしりと心に重く響くお話でした。
共に親とのヘビーな過去を持ち、トラウマと諦念を抱えて生きているふたりが出会い、傷つけ合いながらも愛という希望を頼りに沈んだ淵から浮かび上がって来る、そんな美しいお話に感じました。
2作目は芸術。
スタンの生き方に芸術が深く関わってくることにより、ふたりの関係は揺らぎ、苦しみ、ふたりでいるやわらかいユートピアがまやかしだと、ケイトは決して望まないいばらの道を選びます。
深い深い心の底にある想いを、苦しみボロボロになりながらもふたりはなんとか昇華させていきます。
愛、芸術、孤独、怒り、後悔、いろんな人間の局面が叩きつけられるように展開していきます。
読み終わった後、何が自分にできるのか、深く自問してしまいました。
素晴らしお話でした。
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