吉沢ツムリ事務所
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吉沢ツムリ事務所

鯖玉弓

不思議な連作短編

ネタバレ
2020年8月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 良くできたお話。勧善懲悪的な面白さはありません。不思議な世界を描いているのに、読後感は妙にリアル。多分、現実で起こる事件や出来事は「崖の上の告白」の様な都合のいい真実の暴露もないし、将軍様が刺青一つで善悪を定義してくれる訳でもないので、そういう意味でこのお話は現実的なのだと思います。身の回りの日常同様グレーな世界です。
あと、バッドエンドばかりとは感じませんでした。翼の生えた主婦のお話とか、ある意味ハッピーエンドじゃないかな。檻の中の小鳥が生活も愛も記憶も捨てて、月夜に飛び立つって詩的だし、解放感と少しの切なさもあったな、と。まぁ飛び立った本人は、その後、檻が如何に安全だったか思い知るんだろうけど。普遍的なテーマを面白く読ませてもらいました。
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