このレビューはネタバレを含みます▼
他の方のレビューにもある通り、ほぼヤマギシ会の話だと思います。
他のヤマギシズムの本は大体が、本書の言葉でいうところの「一般」での生活経験があり、「一般」の感覚を持っている人の主観で書かれたものですが、作者さんのように、閉鎖的なコミュニティで生まれ育った人が主観で描く日常は見たことがなく、大変に興味深かったです。大きなドラマがあるわけではありませんが、それがまたおおげさに脚色していなさそうでリアリティがあります。
このような特殊な状況下で生まれ育った人はどのような思考を持った人になるのか??子供の頃何を考えていたのか?と、野次馬的に覗き見した気分になります。
作者さんは作中では普通の生活だったよー、ちょっと変わったところもあるかもしれないけどねー、という感じです。もちろん周りから見ると、子供を働かせまくり朝食抜きで、子供達はいつも空腹、世話係の気に触ると暴力制裁、と異常な生活なのですが、人は生まれ育った環境である程度価値観が形成されるでしょうから、両親がそれぞれ入村し、村で出会って結婚して生まれたのが作者さんですから、村での生活の様子を他の一般社会とは異なる異常行為だと思わない作者さんの反応は当たり前な感じもします。
読んでいると上記の生活が当たり前の日常のように描かれるので、だんだん麻痺してくるのですが、作者の夫のふさおさんが定期的に一般の感覚でツッコミを入れてくれているので、そうかやっぱりこれは異常だよなぁ、と我に返ることができます。
個人の感想としては、北朝鮮や旧ソ連のような独裁国家と、戦時中の物資や食料不足がセットになったような環境だという印象を持ちました。
そして子供は親の愛情が絶対的に必要であること、ひもじい思いをさせてはいけないこと、は子供を持つ身としてひしひしと感じました。あまりの空腹に薬箱の薬で甘い味のものを探しながら、最終的に完食するエピソードが書かれていますが、それほどまでに常にお腹が空いていたのでしょう。
社会に絶望した大人達や、理想郷を追い求めて一般社会では生きづらい人たちには、こういったコミューンはある種の救いの場になるのかもしれません。ただ、自分で望んで入った大人達はともかく、親に入れられた子達もたくさんいるようで、巻き添えを喰らった子供達は本当にかわいそうでなりません。