仮面の女
」のレビュー

仮面の女

ローリー・フォスター/山口美由紀

頁数よりも豊かに感じる内容

2020年9月19日
仮装パーティーで出会って情熱の一夜。
正体がばれたくないのは、ヒロイン、自分に自信が無いから。
でも、ラブコメディ物の常として、隠し事は最悪の形でばれる。

矯正プログラムが、趣旨はいいのに、バスケの描写がただバスケをしているようで、細部や効果はよくわからなかった。しかし、熱血教師ヒロインの学外活動への、彼の理解は嬉し過ぎるほど。期待以上の貢献をする彼は素晴らしい。

あまり、アメリカを舞台にしている実感は少なくて、その一方、貧困や片親家庭の失業や、生活に追われて養育環境が疎かになる状況といった、問題の所在に温かい目線。ヒロインの志の高い奉仕活動部分を通じて彼はヒロインを認め、ヒロインは彼のプログラムに対する姿勢を通じて、外からは分からなかった彼の良さがスッとわかってくる。

ただ、たとえ一晩でも忘れられないほど気に入ったのなら、そこまで被るイメージを見出だしながら、疑いを抱かずにいられるものだろうか。昨今、カラーコンタクトやウィッグも相当普及し、瞳の色、毛髪の色は仮装パーティーなら変えていて当然。だが、背格好や声などはそう変えられないだろう。まして電話なら音声情報のみにフォーカス出来て、身近な二人の女性なのだからダブりそうなのに。更に、決定的な、再度の致してしまった夜の後も、当初割と疑惑燻らせながらも確信していないが、そこは、何となくの湧き出す疑念に駈られて動いて挙げ句に見つけちゃう方が、変な能天気さでまぬけ人間みたいに彼がならずにいい、とさえ思う。ま、ここはHQだから、それに、そういう疑い方によってではなく、偶然の産物にした方が、二人の今後の関係からは禍根は残さない、とは言える。でもでも、彼って弁護士なのだからね、とは思ってる。

すごく狭い人間関係の中で繰り広げられている話。
その中で、彼が正体が判らないという話を一体幾つ読んで来たことだろう。この類型では、そのイベントから、異性として相手の意外性を知っていくことになる。

謎の達成感、という二人の会話のシーン、良かった。もっと印象づけてもいいくらいに思った。

いろいろ小さな不思議さはあるが、中身は間延びがなくて、充実していた。
(補:私は巻頭以外は彩色はちょっと・・。好みと自分の目の問題ですが。)
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