炎の向こうの愛
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炎の向こうの愛

シャーロット・ラム/中村理恵

素直に好感を抱ける登場人物がいない

ネタバレ
2020年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 期間限定読み放題。
有名な画家のヒーローは自動車同士の事故に遭い、怪我と火傷を負って入院。看護師ヒロインがそんなヒーローの担当になるが、実は事故を起こしたのはヒロインの父で、ヒロインの父がそんな事故を起こしたのはヒロインが電話で父を呼び出したせいだった。そのため、ヒーローに罪悪感を抱きつつも惹かれていくヒロイン。一方ヒーローは事故を起こした日に見かけた幻の如き女性を忘れられず、繰り返し夢に見ていた。
という感じで始まる話だが、最初から時間軸がヘンテコで、途中ヒロインが時間を超えてワープしたかのような印象を受け、頭が混乱しそうになった。ヒーローが追い求める女性の正体を誤魔化したかったのだろうが、そのせいでヒーローは幻の女性を追いながらヒロインを弄んでるみたいで印象悪いし、ヒロインはヒロインでヒーローの事故のきっかけは自分だと悲劇のヒロイン気取りつつ、ヒーローと、同じ病院に勤める医師(プレイボーイ)を天秤にかけるような行動をとっていて、どっちも微妙な人物になっている。
ついでに、ヒロイン父は若い妻に夢中で、同居する一人娘の誕生日すら忘れるようなひどい父だし、ヒロインの義母はヒロインにマウントとって誕生日に父をわざと連れ出すクソ女。ヒロインに迫る医師も下心満載、ヒロインと別れたら悪評を流し、速攻でほかに乗り換えると、ろくな人間がいない。ヒロインの同僚看護師も看護師としてはなかなか性格悪いし、この話にまともな人はいないのか。世の中に完全な善人はいないし、ダメなところがあるのは当たり前だとは思うが、この話の場合、一人の人間のよいところと悪いところのバランスがちぐはぐで気持ち悪かった。
一般的な物語だと周囲の人間が酷いとヒロインぐらいは極端な善人になるものだが、このヒロインは善人というには微妙。ヒロインが20代前半くらいならあの言動もギリギリ許せたかもしれないが、27歳にしてはやってることが情緒不安定な子供っぽいのが。看護師の職務には忠実そうに見えて、ヒーローがらみは普通に下心ありなのわかるし。いっそひらきなおってくれたらマシだが、終始悲劇のヒロインという原作者の意図というか推しが強くて読んでて冷めた。
二人が結ばれてハッピーエンドではあるが、お金払って読んでいたらモヤモヤが強そうな話だった。
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