MOON―昴 ソリチュード スタンディング―
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MOON―昴 ソリチュード スタンディング―

曽田正人

アダンもびっくり。

ネタバレ
2020年10月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ バレエは総合芸術です。それを理解しないまま続編9巻まで出版できたのは、主な読者がバレエを知らない青年誌だったからでしょうか。
いずれにしても、ここまで完璧に音楽を無視したバレエ漫画は初めて見ました。前編のガムザッティでも、本作のブルーバードやジゼルでも、この作者さんは、曲を解釈する以前にまともに聴いていないようです。

作者が総合芸術としての古典の舞台を知らないから、主人公たちの個人プレイが型破りである事を賞賛する、不思議なバレエ漫画が出来上がりました。
ダンサーの手や首や背中や足がバラバラなのも、最後まで直りません。
本当に不思議なのですが、なぜこの作者さんにバレエ漫画を描かせたのでしょうか。作者さん、なぜ舞踊の中でも作画の難しいクラシックバレエを描いてしまったのでしょうか。
インタビュー記事によると、作者は2001年頃にバレエスクールでレッスンを体験し、舞台(クラシックバレエではない)も経験したそうです。
連載スタートする前に経験すればいいのに。。
色々と残念です。

以下、少しネタバレ。
前編では「太く短く燃えて尽きる、破滅型の天才ダンサー」として描かれていた主人公ですが、後編である本作では「適度に太く、長く、燃え続けて実績を重ねていく優れたダンサー」に上手く修整されています。
数年後オペラ座で最高位への昇格の示唆に、
「いや、オペラ座とは水と油でしょ。」
と突っ込みたくなりましたが、どうやら作者はシルヴィ・ギエムに寄せたようです。という事は、主人公も昇格の後に退団するのか。。
であれば、落としどころとして不自然とまでは言えないでしょう。ハッピーエンドです。
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