このレビューはネタバレを含みます▼
強力な魔力を持つ魔術師レンザは勝手気ままな独身生活を謳歌していました。それは幼い頃の複雑な家庭事情と、自分の体質の事情によって出来上がったものでした。自分が幼い頃に成し得なかった温かい家庭を持ちたいと強く願っていたレンザでしたが、強い魔力を持つものは子孫を残し難い体質であることを知り、自暴自棄になります。そんな時、好きでもなかったミアと関係を持ち、ミアは妊娠します。レンザは自分の子だと分かると、責任を取ると言いますが、事態は思わぬ方向へ。あれよあれよという間にミアの9人家族と一緒に暮らすことになります。今まで好き勝手に散財し暮らしていた独身貴族が一転、極貧大家族のために給金を前借りし、資産を売り払って借金を返し、生活費を出し、ミアの弟妹の教育費まで約束し、たちまち所帯染みていきます。騒々しく面倒な問題ばかり起きるミアの家族と関り合いながら家族の愛に触れ、戸惑いながらもどんどんと変わっていくレンザから目が離せませんでした。決して楽ではないけれど家族と一緒なら頑張れる、そんな温かさに涙が出る思いです。レンザがミアを好きになってからは、女遊びが激しかった人とは思えないくらいにピュアな恋で、それも良かったです。そして本当の家族になったレンザに良かったね、と言いたくなりました。文官~とは全く違うストーリーでしたが、やっぱり心が温かくなりました。