異世界迷宮の最深部を目指そう
」のレビュー

異世界迷宮の最深部を目指そう

割内タリサ/鵜飼沙樹

鬱展開が多め。でも、それがいい。

ネタバレ
2020年10月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 暗めの世界観で好みが分かれる作品ですが、個人的にはかなり楽しめました。
この作品の一番の魅力は何と言っても登場人物とその技名や詠唱でしょう。
登場人物の大半が精神的にしんどい思いをしながら、狂気で溢れています。マトモな人なんて殆どいません。最初はマトモだと思っていた人も、後でやっぱり狂っていたんだと思い知らされることになります。おまけに章が進むにつれ、狂気のレベルも上がっていきます。でも、結局は彼らの根底にあるのは誰もが当たり前のように抱えるささやかなもの。最初はイキっていて絶対に好きになれないと思った人物でも、章の終わりにはその人物の弱い部分に触れ、共感し、好感が持てるようになります。これは作中で誰よりも不幸な目に遭っている主人公が彼らを狂気から救い出す物語であり、それと同時に主人公も救われていく物語です。普通ならダサく感じる技名や詠唱も登場人物が悩んで、足掻いた果てに出した自らの生まれてきた意味と絡められて物語の中に落とし込まれているため、思わずかっこいい感じてしまいます。
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