財界貴公子と身代わりシンデレラ
」のレビュー

財界貴公子と身代わりシンデレラ

栢野すばる/八千代ハル

叙情的です

ネタバレ
2020年11月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 昭和50年代を舞台にした、誠実で健気な理系ヒロインと、包容力満点のヒーローとのやや複雑な結婚物語です。
最愛の従姉を亡くし、育った家で虐げられているヒロインを従姉の元婚約者であるヒーローが救い出すという滑り出しなんですが、そこに至るまで生前の従姉とヒロイン、ヒーローの関係がじっくりと描かれます。
また、不幸な生い立ちのヒロインは、そのトラウマからかなり進行した夢遊病ですが、そのへんに悲壮感はありません。寝床でヒーローとヒロインの足首を緻密に計算した長さの紐で縛りあうなど、理系ヒロインの愚直な努力、引っ張り回されるヒーローの苦笑が面白いです。二人が本当の家族になるまで叙情的に綴られていき、時には切ないながらも、最後は穏やかな気持ちにさせられます。
残念なのは時代背景。昭和50年代にはまだ一般的ではなかったのでは?というものがポンポン出てきますね。スーパーのビニール袋、NPO、「レトロ」という言葉。現代では日常的な物や組織や言葉。その発祥や浸透した過程など、イラストと同じくらい作品に影響を与えるものだと思います。
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