キス
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キス

一穂ミチ/yoco

恋心が生まれた時

2020年12月27日
対照的な苑と明渡の子供時代が豊かな表現力で書かれていて行く先を追わずにいられない。苑の目線で語られる心のうちが読んでて苦しい。非力な子供だった苑が成長するにつれ強くなろうとするのではなく諦める心のクセを育ててしまうのはけっこうリアルかもしれない。後半、二人に降りかかった困難はもう泣けてしまう。まるで違う話ですが木原音瀬さんの「パラスティックソウル」を思い出しました。愛だと思っているものが本物か、この恋心がどこからきたのか、切ないほど愛しい気持ちがあるのに愛することができない苦しさ。前半にふたりの人物像がしっかり伝わっているから後半の展開がもどかしく、やるせないです。あっという間に読みきりました。あーまた貢ぎ作家に出会ってしまった(本望)
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