キスを繰り返す位あたりがとても良かった

十分すぎるほど過去傷ついたヒロインが、新たに彼との関係でも傷つけられる。
あんまりじゃない？
彼は自分を守るのに必死だったんだろうが。
あれほど関係が進む迄優しかったのに、深入りへの恐怖からあとは同一人物には思えないほど。
不気味な敵は話の殆んどを影で動いた。姿を見せないことで恐怖心を煽った。そこは緊張感を持たせてダレは防げていたが、それでも時間進行が無駄に間を持たせているみたいで語りのキレが遠のいた。彼の愛を終盤で語らせるシーンも、これ迄ヒロインを傷付けた言動の埋め合わせ効果を狙ったのかもしれないが、長すぎる。
甘いシーンを長く取るのは、場合によってはウットリとなる目玉部分とわかっていても、この作品はドラマの中で終盤でどかどか糖分強めで投入されたため、眉間の頭の奥の方が鈍く重い飽食感に襲われる。
終始ロマンス小説でありながら「死」と「犯罪」が多いことと、終盤の甘味過剰感は、私には中和されなかった。
44%の所で、「彼は人前で感情を見せるのがきらいだったので、その気持ちを顔に出していた」は、「きらいだったのに」ならわかるのだが。
48%の所、「でもあなたは、私が自分の過去を誰かに話したのか聞いたから」「君もいまきいたろう」は、私の理解力が及ばず、このシーンでは二人の会話をきれいに結べなかった。

前半のうまさが、二人の間に不穏が立ちこめる転回部での、躊躇を始めるガロンのキャラ変的な行動に円滑に連結している感じがしない。
彼の苛つきから来る刺々しい言葉も、彼サイドに決して立たないジェイコブズビルの人々に寄り添う筋立てとしたって、彼を優秀なFBI捜査官としている筋立てなのに発言が浅慮。そんな人材なら彼ほどのキャリアは築けない。国の選良たる高級(高給)役人を見くびった筋立てで、非現実的。
捜査がチーム戦としたかった割には、せいぜいペア単位の行動メイン。「世界最高の男たちとともに仕事をした」との記述に具体性が乏しいのだ。世界最高云々を感じ取れずその言葉が浮いてしまう。

コミックで、ジェイコブズビルが舞台の他の作品も読んだことがあるが、人口2千人の町というサイズに比して犯罪が多い地域、ということなのか。誰もが町を駆け巡る噂により私的事情をあれこれ知ってる小コミュニティの設定なのに、知ってる知らない隠した公然の秘密等の境が曖昧。秘密がキャラの考えからでなく、作者の作劇都合に感じてしまう。