狂愛の月~禁断の愛に姉弟は溺れる~
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狂愛の月~禁断の愛に姉弟は溺れる~

笹木ささ

史実上の伊達政宗とはもはや同名の別人

2021年1月30日
一言で言うと読者を大きく選ぶ作品。
受け入れられない読者の方が圧倒的だとは思うが。
この作者の歴史ものには元から史実無視傾向というのが存在してはいたものの。
特にこの作品は全体的にそうした史実無視の度合いが甚だしい。


そもそも、この伊達政宗の姉という人物自体が史実上でもその存在が確認できないので。
だからこの作品の中の伊達政宗の姉とされている月貴の存在がこうして便宜上、別の名前を付けられているというレベルの史実の改変ではない。


また、この作品の中での伊達政宗自体がもはや史実上の政宗とは同名の別人とした方が良いレベル。
史実上の政宗の面影はどこにもない。
この作品の中の伊達政宗は人格破綻者のヤンデレ男と言うしかない。


軟弱で男らしさは皆無で、姉月貴への禁断の愛にしても、どこまでもその愛し方が軟弱で病んでいる。
卑怯にも薬を使って、無理やり月貴と関係を持つとか。
せめて正面から正々堂々と政宗が月貴に迫るという形の方がまだ受け入れられたものを。
政宗ファンではない私ですら、さすがに史実の政宗に対して失礼過ぎるだろうと感じるくらいの、史実での政宗の姿とは悪い意味での大きな改変振り。


それからこの作者の歴史ものの特徴としては、ヒーローよりもライバルの男性キャラの方が魅力的に見える傾向があるように思えるのだが。
「箱庭の蝶」の蜂須賀家政、そしてこの「狂愛の月」の定綱にしても。
特にあまりにもこの作品の政宗が単純にヒーローとしての魅力がないせいもあり、月貴の夫の定綱の方がよほど外見も性格も男らしく、魅力的に見えるのだが。


TLというのはヒーローの性格設定も読者に好まれる傾向などもあり、大体は似たようなタイプのヒーローばかりになりやすいのだろうが。
それにしてもこの作者はもっと魅力的なヒーローの性格設定については、もう少し勉強した方がいいのではないのか。
それからこんな歴史ものの禁断の姉弟ヤンデレ恋愛が描きたければ最初から全て架空の人物の設定で描けば良かったのではないのか。
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