濃く、甘く熟して 復讐に燃える乙女は禁断の愛に囚われる
御子柴くれは/龍胡伯
このレビューはネタバレを含みます▼
富豪一家の居候であるヒロインは、両親の仇と思う富豪の一人息子であるヒーローと故意に関係を結び、復讐の機会を待ちます。とはいえ、それほど復讐心は強くなく、庭師の青年との幸せを選ぼうとするものの、結婚式当日にヒーローに略奪され、溺愛という名の囚われの日々に。
昼ドラのジェットコースターのように、目まぐるしい展開です。ヒロインの心理もジェットコースターのよう。誰が好きで誰と共に生きるかに苦悩し、時には不誠実な態度や言葉も出てしまいます。
ヒロイン、ヒーローはじめ、周囲全員、ネジが一本抜けているような人たちばかりです。ヒロインの正規の婚約者は、簡単に匿われたり身を引いたり、何が何だかわからない存在です。ヒーローの両親は、ヒロインが実は裕福と知ると文章5行で態度を軟化します。ヒーローは、ヒロインに執着しても自分のものにならない当たり前な事実に自死未遂を起こすようなヘタレです。いちばん謎なのは、ヒロインで「復讐」はどこにおいてきたの?という感じです。亡き両親からの相続で、相殺されてしまったのでしょうか。
多彩なクリエイティブ世界に身を置く作者のようです。しかし、この小説は既存の物語や見聞きした人の経験などが組み合わさった世界にすぎません。自分の目と心で捉えていない借り物エピソードの連続では、人に感動を与えられません。
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