このレビューはネタバレを含みます▼
エス本編は全4冊で第1巻であるエスは本編+宗近視点で描かれている短編が収録されています。本編は全て椎葉視点ですので宗近視点の短編は初めて宗近の心の内を垣間見る事ができて楽しかったです。その後第2巻の咬痕(かみあと)、第3巻の裂罅(れっか)、第4巻の残光(ざんこう)と続いてフィナーレです。
エスの短編集がstill recallです。構成は短編7つ+奈良千春先生の漫画一つという形です。これは本編中の時系列のものもありますが、大部分は本編終了後の話です。メイン二人の視点だけではなく他の主要人物からの視点で描かれたものもあり、本編では分からなかった過去なども語られています。改めてこの物語のバックグラウンドの深さを感じました。
デコイの2冊はエスのスピンオフ作品です。デコイ第1巻が囮鳥、第2巻が迷鳥という感じで連続した一つの物語です。エスの世界観の上に二組のカップルの話が描かれています。本編とは全く別のストーリーです。宗近と椎葉はほんの少し登場します。
最後、最果ての空。これは本編に出てくる椎葉の義兄が中心の物語です。これにはちょいちょい椎葉が登場します。そしてこれもまたデコイと同じようにこれだけでも読める、全くの別のストーリーです。
私はこの物語が大好き。そもそもこの物語はBLっぽくない。本編はあんなにも二人の絡みがあるのにも関わらずです。最果ての空に至ってはほぼ絡みもない。文章もライトなノベルではなくて本格的な文芸小説のようです。ライトと思って読んで本格的な文章が襲いかかってくるのでそのギャップにびっくりするのも分かります。でもそのリアルな文章を読みこなす頃にはこのエスの世界観に魅せられています。そしてよくあるサスペンスなら主人公と共に謎を解き明かしてここで終わりですが、これはBL本です。まぁ二人が絡む絡む。最初は身体の関係だけ。そこに心は無い……と見せかけて本音を隠し必死で耐える。それが切ないんです。その描写たるや……作者は天才としか言いようがないです。そしてお互いのことが好きすぎて耐えきれなくなり、関係が破綻する——。
はぁー、最高です。
めっちゃ楽しかったです。