毒姫の棺
」のレビュー

毒姫の棺

三原ミツカズ

『毒姫』を補完する本編のような物語

ネタバレ
2021年2月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 正直、『毒姫』だけでは不完全燃焼な気持ちのまま、何年も過ごしていました。
『毒姫』は素敵な作品です。
ベラドンナの悲恋から始まり、ミトラガイナからの刺客である毒の姫リコリスとグランドール第三王子カイトの恋に、第一王子ハル、第二王子マオ、二人の片想いが四つ巴で絡まっていく中、根底にあった三つ子の呪いとマオのハルへの執着、カイトの孤独と異質性、そして父王イカルスの死と彼の思惑が、ミトラガイナの女王にグランドールへ攻め込む隙を与えてしまい崩壊へと導かれるストーリーなのですが、この破滅へと向かう流れが(特に5巻)あまりにも誰かに仕組まれていたように呆気なくて、ずっとずっと気になっていました。
その補完が行われるのが本作、『毒姫の棺』です。
納得しました。
物語に深みが増しました。
そう、仕組まれていたんです。
あまりにも自分の思い通りに動きすぎる世界に飽いて、『神の手』に運命を委ねたあの人が、彼らを死に導いたラスボスでした(リコリスはどうあっても短い命、愛する人に触れられない定めなので、あの最期は最良かもしれませんが……)。
けれど、その人が唯一『未来を見てみたい』と思った王子、行動の読めなかった王子、予言という運命に『無能』の烙印を押された王子が、まだ生きている。苦しみもがきながらも、国のために命を繋いでいる。
今はただつらいばかりの彼の進む先にあるのが光であると信じて、下巻を待ちます。
彼がリコリスの塔に語りかけにいくシーンは、とにかく切ないです。
幸せを掴んで欲しい……。
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