このレビューはネタバレを含みます▼
王国第三海軍卿・公爵28歳×元伯爵令嬢18歳。弟のために没落した家の再興を叶えるため、初恋の"王子様"相手に『恋多き遊び女』を演じることになったヒロイン。父が過保護に守り育てられ13歳から修道院に入ってた彼女は恋愛に疎く、二週間の付け焼き刃で仕入れた情報は本からのみ。五年前の仮面舞踏会で出会った憧れの人の懐に潜り込むことに成功したものの、言動が男好きの触れ込みと一致せず周囲を戸惑わせる彼女が可愛かった。一方、女性にだらしなく一夜限りの遊び人と言われるヒーローの実体は軍に必要な情報を得るためなら女性達と関係を持つことを厭わない男。近しい人達は遊び人でもないし女性にだらしないわけでもなく、関係を結ぶには理由があると彼の行動を正当化してたけど、身勝手な屁理屈のように思えた。五年前にヒロインを見初めその思いを一途に引きずっていたというなら、尚更その行動は誉められたものではないと思う。とはいえ、仮面舞踏会で彼女が扮していた人魚姫が忘れられず、領地の屋敷に人魚姫の像を設置するヒーローの愛は少々重め。軍艦の機密情報を巡る国家間の思惑が絡み、騙したつもりが騙されていたという展開には驚いたけど、伯爵家の再興と結婚が叶ってよかった。個人的にはスピンオフ作品『美しき毒舌王…』の二年後という設定で、謀反後に生死不明となったフィルシア王国外交官の王弟殿下が隻眼となり、他国の諜報機関“黒百合騎士団”で暗躍していたことに驚いた。再び敵役で登場した悲しい生い立ちを持つ二十代前半の麗しい王子様。彼にも救いの女神が現れ、憎しみから解き放たれる日が来ることを祈りたい