このレビューはネタバレを含みます▼
昨今のなろう小説のようなものと比べれば力作だと思う。でも、個人的にはハマりきれなかった。その理由として、1.文章が説明過剰。2.その割には物足りない。
ベルタが長女気質でしっかり者だとか、そういう『説明』はくどいほどある。が、ベルタが実際にそういう気質を行動に表す『描写』が足りない。
例えば、カシャ人の若い女官たちの危ういふるまいにベルタが(彼女たちの教育も自分に期待されていることなのか)と思うシーンがあるが、その後ベルタが女官を教育するような描写はまったくない。長女気質を発揮して頼りない同胞を教育した結果、のちにそれがベルタ自身の助けになるとかすればカタルシスがあるのに。
正直、王宮でのベルタは自室に引きこもって身内を相手にしているだけに思える。それなのに彼女が賢いだの長女だのという『説明』ばかりは飽きるほど繰り返され、状況は都合よく展開する。
ものわかりの良い夫は一回キレてみせただけで考えを改めて子を取り上げられることもなく、正妃は没交渉のうちに自滅、嫌な双子の侍従も勝手に自爆したし、姑は実家の金の力であっさり味方化、周囲の侍女たちは最初から信奉者。息子を産んだこと以外にベルタが成し遂げたことって何?
続刊を買おうという気持ちにはならなかった。
追記:油絵風の表紙絵は☆5。