このレビューはネタバレを含みます▼
木原音瀬先生の作品と言えば「痛い」などが良い意味で共通していると思います。今作はデビュー作でありながら、やはり音瀬先生の切ない感情描写やストーリー展開もありますが、高校生・浩一が教師の高橋に惹かれ始める描写が繊細かつ悶えるような愛おしさを文章の端々に感じられ、今作は木原先生の作品の中では「甘々」「嬉しい」「想い合い」「赦す」という優しい感想を持ちました。時代背景も携帯電話がない時代(家電でのやり取り)がレトロで情緒的な人間関係を瑞々しく描かれていて、携帯がない時代の恋愛から数年後の携帯が普及し始めて利用者が増えている交際時代まで。終始、素敵なストーリー展開でした。書き下ろしのスピンオフは、公一の親友の柿本が主人公。柿本本人の恋愛事情から、公一と高橋のその後の生活も垣間見ることができ、改めて柿本自身の狡さやゆるさ、また高橋への本能的な嫌悪などは、これは男性同士の恋愛を抜きにして、もし異性同士の恋愛であっても柿本が嫌悪したものを感じたのではないかなと思いました。柿本本人の問題のため、スピンオフの短編では序章という感じでしたので、続きあれば嬉しいというスピンオフでした。何度でも読み返したくなる作品でした。ありがとうございます。