大富豪の小さな天使
」のレビュー

大富豪の小さな天使

マリー・フェラレーラ/桜野なゆな

可愛らしくて賑やかで一生懸命な話

ネタバレ
2021年6月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「大富豪」ーー大富豪大富豪した存在でない。いつものように、HQは邦題にセンスが今一つ。漫画家サイドの責任ではないが。
赤ちゃんを押し付けられた男性を相手とする定番もの。
人物の絵、なんとなく気になるので原因を考えると、時にかおかたちや両目の位置のズレを感じるからかと。男性の登場する絵には、ヒロインが彼を男性として意識、というシーンの根拠となるコマが見えない。キスは衝動で明確な自覚は事後、弱い。一つの空間にただ二人で居る絵。呼ばれて男性宅へ上がる事でいつの間にか、又は次第に、意識するようになる、という裏打ち描写を設けて欲しい。

仕事人間が、突然現れた赤ちゃんの為に改心(?)するのはいいが、変わっていくところと、仕事の采配描写物足りない。秘書や社長の一言で片付けているが、職責や進行中の案件からして、引き継ぎの配慮が見えないのは、 HQあるあるの、仕事がお飾りだからと思えてしまう。それにサンフランシスコで託児可能ではあっても、生活の拠点はこちらだろう。

ヒロインも親のお金で幼子抱えて生きてきた、との説明が、学費云々と親切なようで学位取得はお金だけでやってこれない疑問は残る。忙しい養父設定も、別居だったわけではないだろう。養父母であっても粗い設定。ヒロインの苦労を肉付けするために用意した、環境の説明だけに終わっているようで。ヒロインの置かれた状況へ、だから共感しきれない。
彼の劣等感、バックグラウンドは伝わってきたが、セイレーンとの回想シーン、母親のトゲある言葉に傷つくシーン、出しておいて物語内放置。後で普通に賑やかフィナーレというのが、どうも読後に小骨の残存感。全体としてなんともイージーだとの印象が、この作品を物凄く軽い存在にしてしまっている。

実は、という物語最後の意外な喜びの為のタメが効果的に来なかったので、あっさりうっすらゆるく話が進行、ドラマ力弱く展開してきて、話の経過に感情を余り動かされず読み終わってしまった。子どもをストーリー上「利用」することに大半を負うて、大人の感情ストーリーの漫画化が後退しているように思った。要はロマンス成分不足。
もっと要所要所説得力を見せてもらい、フィナーレに辿り着いたときに良かった良かった、と味わいたかった。
ヒロインが何を置いても一番に大事にして育てたリビーはホントいい子に育ったよね、とは思うものの。

あと、誤字(40頁)はやめて。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!