お山の神さま相続しました。【電子限定描き下ろし付き】【コミックス版】
夏伐とげ
このレビューはネタバレを含みます▼
台詞の言葉や、あちら(山、異界)とこちら(里、人間界)の仕組みがわかりづらいというレビューがありますが、確かにわかりづらいんだけど、私はそれも含めてとても好きです。
以前レンタルしてたのを買いなおしたくらい。
個人的見解ですが、あちらの世界の道理や言葉って、そこに入ってしまった人間にすぐ理解できるものでしょうか。
それは異界側のナビゲーター(今作品では主人公を娶る攻)が、人の言葉で人に判る様に完璧に通訳しないと無理じゃないかしら。しかし向こうも人間の事を完璧にわかっているかと言うとそうじゃない。
異質の世界の決まり事はわからなくて当たり前。そこを力技で同化するのを怖がった受けの為に、人の交わり風にしてくれるとか、すごく純粋で優しい「人」と「異」の交わりだなぁと思うんです。(ここでBLで必須のエロが攻の優しさの表象になってるのが尊い。)
書き下ろしのラストが交わりの最中に見上げた大樹の木漏れ日というのも、最初は?って思ったけれどこれに気付くと深い感銘を感じました。
あと絵が好きです。少し癖があるけどとても丁寧で味があって、異界のキャラクター達がみんな魅力的で印象的。どんぐり坊やとか木造三人官女とか。蛇のお目付役と大工さんがキャラ立ちがちょい弱くて残念。
攻の神様が本当に、神様なりに受けを気遣い、受けも理解出来ないから怖いが先立ってしまうんだけど、先述した人風の交わりからだんだん攻の愛情を感じ始めて変わっていく過程が素敵です。
わかりやすい異界転生ものも面白いけど、よりリアルな「わからない異質な相手」を手探りでわかりあっていく。広い意味の恋愛全般も、実はそんなものなんじゃないでしょうか。なんてね。
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