このレビューはネタバレを含みます▼
ホラーは苦手なので中表紙のカラーページにこの世ならざるモノを確認した瞬間、心拍数が跳ね上がりましたが無事読了。そのまま封印しようとしていたところ、SNSのフォロワーさまから疑問点をいただき再考するために再読しました。霊の存在は最初っから有りきなので、エレベーター音とかクルマのエンジンとか窓の手形とかは霊のせいにしてゾワゾワ感をアップする小道具だと思いました。本当に怖いのはアラフォーにもなって自らをコントロールできない人間の弱さだと位置づけたのだろうと思いました。対してナオは自分の存在意義を見出せず、自分で認識できない深いところで傷つき続けている子どもなのだと。そう思うとナオの嘘と本音が交錯し苦しんでいるのが見えてきました。寺田が強い大人であったなら2人の関係は違う結果となったでしょう。。。さて前出の疑問点ですが、書き下ろし後日談にて寺田がナオの本名になぜ食いついたのか?という事です。これは初めて2人が会った日にファミレスでナオが食べ切れないにもかかわらず栗フェアのメニューを全て注文したのを思い出したからではないのか?誰からも顧みられず自分でさえ自分を見捨てているように見えたナオが『栗』の文字に反応した。それはナオが本当にまだ子どもだったのだ、心底ではまだ自分をあきらめてはいなかったのだ、と思うと切なさが溢れてくる良い後日談だと思います。ここを書き下ろしたことによってエモさが格段に上がりました。そしてこの後はナオから寺田に連絡するのだろうな、寺田はパートナーとナオのどちらを選ぶのかな、なんて想像を膨らませてしまいます。台湾在住で長く日本に思いを馳せてこられた作者さまだからこそ描けた日本文化に対する造詣の深さや気持ちの機微に今後も期待を込めて応援しいきたいと思います。