大奥
」のレビュー

大奥

よしながふみ

紡がれていく人の想い、動いていく歴史

ネタバレ
2021年9月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品があることはずっと知っていましたが読むのに根気がいりそうなのと、男女逆転って…という気持ちもあり、今一歩手が伸びなかったのですが、コロナ禍で家にいるので思い立って読んでみました。
もうめちゃくちゃ良くできた作品です!

イロモノ設定では?と少しでも思っていた自分を殴りたい。設定の妙がある仕上がりなのです。この設定でなくてはならなかったという説得力があります。

フィクションを混ぜながらですが、史実に沿っており歴史の勉強にもなるし、歴史の教科書では『ただ代替わりしただけの将軍たち』にもそれぞれ人生があり、時代が流れていく、動いていく背景には色んな人の思想や思惑が動いているのだという、当たり前だけど忘れがちなことに気付かされます。

そしてうまく表現できないのですが、この設定であることで、自分の中にあるジェンダー概念にも気付かされるというか…
自分でもそうと気づかないうちに、男性ならこう、女性ならこう、というような従来の枠がまだまだあったことにも気付かされました。
よしなが先生の表現力に脱帽です。

どっぷり世界に浸って読むのがおすすめなので、連休など纏まった時間のある時に、完結しているからこそできる一気読みを、そしてその後もう一度読み直しをおすすめします!

好きなキャラクターはたくさんいるのですが、中でも有功様、阿部正弘、家茂あたりは個人的に思い入れが強いキャラクターです。
阿部正弘の独白、家茂の無念が伝わるシーンはボロボロ泣いてしまいました。
よしなが先生のスッキリした絵が、かえってキャラクターの気持ちをこちらの胸に迫りくるものにしていると思いました。絵がごちゃついていないのでこちらに考えさせる余白があるというか…

難しそうと毛嫌いせず、色んな方に手に取って頂きたい作品です。
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