悪い大人になりまして
」のレビュー

悪い大人になりまして

黒岩チハヤ

大人の嘘にヒリヒリする

ネタバレ
2021年9月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●こちらの作者さんランダムに拝読しており4作目です。(レビューは初。)それっぽいのを選んでいるからかもしれませんが、こちらの作者さんの作品はどれも男たちがめんどくさくて、ひねくれてて、じれったくて、胸がヒリヒリ、チリチリする感じ。そこが好きです。(『ましたの〜』などは全然雰囲気違いそうですが…。)本作は「悪い大人」のついた嘘が読者側には見えているから、余計にヒリヒリしますね。
●宇井は夏乃を「忘れた」と言う。自衛の嘘。高校のとき夏乃に告白して「友達」と悪気なく言われてしまった宇井。卒業後距離を取った。「忘れてる」ことにしたかった。なのに夏乃は宇井と「恋人だった」と言う。打算の嘘。ただ宿を確保するためだった。
●宇井は夏乃の嘘が嘘だと分かっているから、それを利用しようとする。でもどんどん「好き」が蘇って溢れてくる。夏乃は自分が何がしたかったのか分からなくなって、「好き」の自覚もないままぐるぐる悩んで、宇井の家を出ようとする。…このへんのもだもだしたやり取りがヒリヒリして好きなんですよね。
●これも作者さん共通の特徴かもしれませんが、物語のたたみ方は非常にアッサリしています。ツンがそれほどデレにならないまま終わる感じ。私はその余韻も結構好きです。「悪い大人」同士の絶妙な言葉選び。描き下ろしでデレ補完です。
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