うしみつどきどき古書店譚
」のレビュー

うしみつどきどき古書店譚

tacocasi

作家さまの技量に裏付けされた面白さ!

ネタバレ
2021年10月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ファンタジーが、地に足付いた体で語られているのが好きだ。
そんな世界の山あり谷ありを、ふつうの子が体験してくれる事で一緒にその世界に連れて行ってくれるのも好き。
古来よりそういう冒険譚の鉄板はやっぱり間違いはない。

さてこのお話、3つの要素が非常にうまく機能している。

第一に、この世ならざる者が九十九神的存在で日本人に親和性が高い。
神なのに人間以上に喜怒哀楽を人間っぽく出しているのがすごく好ましい。
また人の信仰心が、強いはずの神の存続を左右するというのがとても良い。

第二に、性的対象者が子どもに戻ってしまう、つまり対象では無くなってしまう。
それを愛の力でカバーするというのがエモい。
好きな人の中身は変わらないけれど、入れ物が変わるというのは、実際だと好きが覆ってしまうくらいの事だと思うんだよね。

第三に、主人公がキレイな気を発し、固定観念に囚われず全てを受け入れる気質であること。
読み手は殆どの場合主人公の気持ちで読むので、自分までキレイで素直な存在でいる事ができる。

それらを踏まえ、逸脱せずに事件と感情を乗っけて走っているので、読んでいて非常に気持ちがよろしい。

ファンタジーは違和感を取っ払い、その世界にストンと落ちていけるのが大前提である。
本来なら違和感であるところの設定は非現実でとんでもないことの方が面白いので、そこはかなり重要だ。

このお話がこんなに面白いのは、キチンとしたプロットと作家さまの素直な情熱のおかげだと思う。
良質なお話との出会いに改めて感謝を。

えっちしてるけどそういうシーンは描かれてないよ。
あとねずみになりたい陽蔵さんは、こないだ読んだ誰烏雌雄そのまんまだなーとしみじみ…
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