きみと蓮の庭で【シーモア限定描き下ろし付き】【コミックス版】
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きみと蓮の庭で【シーモア限定描き下ろし付き】【コミックス版】

らうりー

3人の心情それぞれに寄り添える

ネタバレ
2021年10月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●作者さんの作品いくつか拝読しましたが、こちらが一番好きです。最初は美しい分冊版の表紙(単行本では口絵)に惹かれました。
●戦争で恋人の拓郎を失って男娼として生きている珠緒。拓郎の弟で、兄の恋人と知りながら珠緒を想っていた吾郎。再会後のお話の合間に過去のシーンも丁寧に描かれ、戦中戦後のやるせなさのようなものも相まって、三者(拓郎も含めて)の感情が揺れ動く様がよく分かります。
●珠緒は自分が吾郎に惹かれているのか拓郎を重ねているだけなのかと戸惑い、一方の吾郎は真っ直ぐに珠緒を想って大事にする。(拓郎と張り合う気持ちもあったかもしれない。)吾郎の口から仲睦まじかった頃の拓郎と珠緒の様子が語られ、珠緒は、吾郎に拓郎を重ねている自分もひっくるめて吾郎が想ってくれているのだと自覚して、吾郎と向き合う。これがストーリー前半。
●後半は拓郎の“死”がもう少し重くのしかかって、死、命、先立つこと、残されること、恐怖、昇華…等についての二人のやり取りがさらに深く描かれます。二人がお互いを必要としながら、拓郎の存在は二人の中から消失することはない、そんなエンディングです。
●描き下ろしが素晴らしいので分冊版よりこちらをオススメしたいです。単行本版描き下ろし2本目の『回顧』は、珠緒とおユキの出会いが無声で印象的に描かれています。電子限定特典は再会時のことを吾郎目線で描いたもの。シーモア限定は拓郎と珠緒が大事にしていたキーアイテムを吾郎が使っている日常の一コマです。どれも本編を補完するものとして申し分ないです。
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