このレビューはネタバレを含みます▼
魔法使い(リー)と弟子(ラベル)の物語。1巻目は、二人が魔法の修行をしながら静かに暮らしている。リーは厳格な割に少しズレてて、ラベルはおっちょこちょいだが天真爛漫で可愛い。穏やかな日々の中にも、リーが仕えた亡き王とのシーンが時々蘇る。特に、リーがラベルに贈った「ケープ」によって、元の持ち主である王の記憶がラベルに乗り移るところは面白い。王とリーの過去に期待をさせながら、1巻は終わる。BL?と思いながら、2巻目は怒涛の展開。リーと「王」の過去が明らかになる。リーを心から求める王。しかしリーには、「恋心をもってはいけない」という、女王との制約があった。女王が単に頭が固いからかと思ったら、リーを思ってのことだから悲しい。また、王は自分の国が魔法使いによって繁栄している事(魔法使いの軍事利用)を憂い、魔法使いを開放する。それが国の滅亡に関わろうとも、愛するリーの手を汚したくないという、切ない思いからだった。3巻は、死んだ王を蘇らせようとする、リーの使い魔との闘い。結果的に王は蘇ることは無かったが、王が成仏するとき、愛していないと思っていた妻(ラベルの母)と、長い年月をかけて信頼関係を築けていたことに涙が出た。王とリー、ラベル、お互いを思う気持ちが切なく描かれ、しかもあらゆる伏線がパーフェクトに回収される。恋心を持つことが制約される中、恋愛を超えた絆が、この本のテーマになる。各3巻の題名と表紙が、「坂の上の魔法使い」「無二の王」「黄金の川岸」と、それぞれのテーマに沿った内容になっている。今年、100冊強は読んでいるが、間違いなくベスト3に入る。