あした虹がでなくても
」のレビュー

あした虹がでなくても

きはら記子

言葉の刃が刺さりまくる

ネタバレ
2021年11月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『一途な犬は諦めない』内の『対岸の犬を呼んで』のスピンオフにあたるこの作品は表題作のみで、じっくり読めた。


女装してゲイバーで働く傍らドラァグクイーンとしてステージに立つ千歳はトークアプリで出会った不眠症のリーマンこと凌に愚痴を聞いてもらうのが癒しのひとときになっている。

ゲイであることも女装していることも知らない相手だから安心して話せていたのに、凌は千歳を探して店までやって来てしまう。凌の無遠慮な言い方に怒った千歳が凌を拒否しても凌は謝りたいとまたやって来る。


元々ノンケの凌が無意識で発した言葉が千歳を傷付け、凌は千歳がなぜ怒っているのか分からず、傷付けていることにも気付かない。凌も部下の心無い言葉に傷付けられ、千歳も大好きなママを八つ当たりで傷付けてしまう。自覚があっても無自覚でも言葉はいとも簡単に傷を負わせる刃になる。

ゲイとノンケの恋愛だけでなく、きちんと気持ちを伝えることの大切さや言葉を刃にしてはいけないというのがひしひしと伝わってくる良い作品だった。


『対岸の犬を呼んで』の湘吾が意外といい働きをしていて、それがいかにも湘吾らしくて笑ってしまった。
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