最後のΩは番になれない
」のレビュー

最後のΩは番になれない

赤色マッシュ

設定はすごくいいのだけれど

ネタバレ
2021年12月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 前作のかなりぶっ飛んだ衝撃作で心を掴まれて、すごい感性の作家さんが出てきたなぁと思っていました。久しぶりの新刊がオメガバースということで、この作者さんが描いたらどれほど濃厚な仕上がりになるんだろうと期待大で楽しみにしていたのですが…。
設定はすごくいいのだけれど、それがいまいち生かし切れていなかったかなぁと思ってしまいました。

政府の研究機関の目的がふんわりしていてはっきりしないので、終がこんな目に遭わされている理由がよく分からなくてモヤモヤしちゃうんです。
研究機関は最後のΩを守りたいのか?
心も身体も壊れてもいいから子供を産ませたいのか?
もしそうなら妊娠できないΩと判明した時点で隔離する意味はなくなるし、そもそもたった1人のΩにそこまでこだわるのは何故。1人じゃ産ませようとしたってそう何人も産めるわけじゃないし。出生率上げたいならもっと効率的な方法があるんじゃないかなぁ。
なんか最後の方は国の問題なのか個人の問題なのかよく分からなくなってるし、その辺りのこの世界の設定を、もう少し丁寧に作ってくれていたらもっと物語にハマり込めたなぁと思って、すごくもったいない気がしてしまいました。

αとの子作り強要という絶望的な状況の中での運命の番との出会いはドラマチックですごく素敵でした。一気に惹かれあって終が初めて幸せを感じている姿にキュンとした。もう子作りなんてどうでもいい、最後のΩがせっかく番に出会えたんだからもうそれだけでいいじゃないと思っちゃいました。
最初は不遜だなと思った本田さんが、最後までブレずに終を求めて諦めずにいてくれたのも良かった。最後はとても甘く幸せに終わって読後感は良かったです。

あらすじがすごく好みだったので期待し過ぎてしまったところもあったかもしれませんが、やっぱり絵も雰囲気も好きで今後も注目したい作家さんです。次回作も楽しみにしています。
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