このレビューはネタバレを含みます▼
●自分にしては珍しく、読んでいて涙が出ました。現実を突きつけられて、分かってるよ!どうしようもないって分かってる!!と、何かに抗いながら、祈りながら読み終えた感じです。ほんの小さな奇跡だけが起こって、それがなおさら切ない。
●冒頭で秀斗が死んでしまって、幽玄はずっと幽霊の秀斗と行動するのですが、とにかく秀斗が明るい。幽玄は「生きてるってこういうことだな」と、死んでいる秀斗から感じとっていく。この幽玄の変化が、物語の救いになります。秀斗が幽玄のそばに存在した意味です。
●恋心を発露すること(手に入れたい)と、死を受け入れること(手放さなければ)の激しい感情が同時に襲ってくるので、最終話は本当に苦しい。その激しさを身体の触れ合いで表現しているのがBLとして秀逸だと思いました。そして…秀斗がふわぁとあくび、幽玄が「ヒデの寝顔見るの初めて」と幸せそうに目を閉じて…もーホント…この数日間で何度も読みましたが、その度に胸がぎゅうぎゅう痛んで涙が出るのです。
●原作者さんのシナリオが胸にくるのだろうなと思って他作品2作を続けて拝読しました(うち1作は「少女マンガ」にカテゴライズ)。本作と同じような“どうしようもない切なさ”と“救い”を感じる作品でした。
●絵もとても好きです。作画担当のかたの作品はまだこちらのみですが、今後が気になります。細かいことですが、各話の間にグレーのページが挟まっていて、話数が進むにつれて少しずつ明るくなっていってるんです。夜明けに向かって。どなたのアイディアだろう。編集さんかな?拍手を送りたい。
●描き下ろしも良かったし、カバー下(かな?)では秀斗のスマホ画面が具現化されていて、また涙が…。でも、先にも書きましたが、幽玄の変化と前を向く姿が救いなのです。すばらしい物語でした。