このレビューはネタバレを含みます▼
●同人っぽさは否めません。絵柄も…。お値段も高めに感じます。でも、シナリオが良いです。作者さんが原作を担当されている別作品から来ましたが、「死」を抗えないものとして、受け入れるべきものとして、上手に扱われるかただなと思います。
●既に死んでいる羊飼いのもとに、時折勇者がやってくる。死んでしまってから生き返らせられるまでのわずかな時間を一緒に過ごす。何度も。でも魔王を倒せば旅は終わり、勇者が今後死ぬこともなく、もう会えない。次は天寿を全うするまで。この設定が斬新です。
●「死」とともに「個」みたいなものにも焦点が当たっていて、二人がお互いを唯一の存在として想っているのが良い。ゲームの中では名もなき羊飼いが、勇者に「カイ」と名前を付けてもらい愛されて、自分を手に入れる。勇者も、勇者として世界から求められても自分は何者なのか分からず、カイと出会って自分を自分として認められるようになる。恋を知る。
●えっちはありますがあっさり。この場面はむしろ、勇者がその鎧を脱いで、ただ一人の「自分」としてカイに触れていることに意味があるように思います。ここで勇者の本当の名前を聞いてほしかったな…カイはあえて聞かなかった(あるいは聞けなかった)のかもしれないけど。この後もう会えないことがお互い分かっているのに抱き合う切なさ…
●「死」によってしか会えない二人。会いたいけど、来ないでほしい。10年以上前の作品ですが、さらっと読むだけではもったいない。出会えて良かったです。