見つめてえがいてふれて愛して
」のレビュー

見つめてえがいてふれて愛して

真仲いすみ

優しさに包まれる

ネタバレ
2021年12月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●本文38P短編。『切甘BL』というアンソロジーに掲載されています。まず絵柄が好みで、表紙から佐野にやられました。本文中ではまとめ髪!好きです!ストーリーも、寂しさや不安を抱えた二人が温かさで満ちていく優しい雰囲気が素敵です。
●家庭に居場所のなかったハルカ(詳しくは描かれていません)。幼い頃に出会った絵に包まれるような感覚を今も覚えている。その絵の作者らしき佐野と出会って関わることに。モデルとして…とはいえ、ハルカは必要とされることに慣れていなくて、もっと、もっと…と心の中で求めてしまう。
●一方の佐野は、以前一度は描けたはずの理想の風景が描けなくなっていて、一度描いてしまうと二度と描けないし夢に見ることもできなくなって壊すしかなくなる…と思っていた。ハルカを描くことも怖くなってしまって、「もう終わり」と。
●このことを「自分はもう必要ないんだ」と捉えてしまったハルカですが、ちゃんともう一度佐野に会いに行った勇気に拍手。幼い頃に抱いた絵に包まれる感覚と、佐野に『見つめられ描かれて触れられて愛される』感覚が一致して、涙するハルカ。作品タイトルがちゃんと回収される…
●幼いハルカが見た絵と佐野が塗りつぶした絵が同じものか否かは明確には描かれないのですが、きっとそうなのでしょう。この絵がハルカにとっては救いで、佐野にとっては理想で、二人を繋ぐものだった。二人が共にあることで、ハルカは愛される喜びを知って、佐野の絵にも輝きが戻ってきたという結末は良かったです。優しい短編。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!