このレビューはネタバレを含みます▼
大切な人を亡くして、どれほど慟哭しても、残された者は生きる。その再生の道程として葬送の儀式がある、生きている人のために葬儀はあるのだ、と聞きました。
その過程で、自らの選択だったのなら尚のこと、逝ってしまった理由を探したりタラレバを考えたり、残された側の気持ちは苦しい。それでも生きていく、生きるために自分の気持ちと折り合いをつけていく。
都会で一人逝ってしまった慎太郎の葬儀で、親友の昌典は慎太郎の友達だと言う実(みのる)と出会います。みのるにはどこか謎めいたところがあるものの、初恋の相手だった慎太郎を亡くした昌典は、苦しさを受け止めてくれる実に想いが強くなります。昌典とみのるの縁は、慎太郎が結んでくれたもの。二人が出会う前から分かっていたかの様に。
穏やかで優しい昌典、昌典を支えようとするみのる、昌典にとってカッコイイ慎太郎。逝ってしまった慎太郎を、母親として、親友として、最後に触れ合った相手として、それぞれに受け止めて、前を向いていく。大号泣はしませんでした。みのると昌典が出会って、再生していく物語と思えたので、それほと重く感じませんでした。優しい昌典の周囲は、優しさで満たされていた。涙が出たのは、慎太郎の母親の言葉。自分の息子の死をどう抱えるのか。あのセリフは辛かったです。