このレビューはネタバレを含みます▼
●最後まで読んでから改めて冒頭2Pを見ると、涙出てきます。傷だらけの二人がお互いを手に入れるまで。事件に関してはやや急ぎ足ですが、二人の気持ちが交わっていく描写は良かったなと思います。初読で「?」と思われたかたも、是非再読してみてほしいです。
●野瀬はほぼ殺されたも同然の妹の復讐に全てを賭けていて、そのためなら自分の身体も命もどうでもいい。孤独を自覚してないのか、見ないフリしているのか。戸狩とは、最初身体から媚薬を抜くためだけに身体を繋げます。
●一方の戸狩。父親による身体中のタバコの痕、自分も暴力に走っていたこと、義母の顔に消えない傷を作ってしまったこと。自分の手は人を傷付けることしかできないと思っている。そんな手にさらりと触れる「涼香」に対して、これまで抱いたことのないような感情が芽生えます。
●中盤過ぎの、戸狩から野瀬への大告白からのデロデロのえっちがすごく良いです。そしてクライマックスへ向けて、言葉を交わすことなく戸狩は野瀬を守ろうとし、野瀬は戸狩に頼ろうとします。戸狩に「優しくしたい人」ができて、野瀬にも(恐る恐るですが)「心を預けたい人」ができる。
●あんなにハードボイルドだったのにどうした…っていうくらい、ラストの二人はかわいい。人の愛し方も愛され方も知らなかったから、初恋みたいなもので。周りの人たちにも見守られていたらいいなぁ…なんて、幸せな想像してしまいます。