オリンピア
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オリンピア

丸木戸マキ

余韻がすごい…

ネタバレ
2022年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●本文23P。新刊『僕らのミクロな終末』が気になっているのですが、拝読したことのない作者さんなので短編で世界観を覗いてみたいと思い、手に取ってみました。ごく初期作のようです。絵柄も相まってか、昭和40年代?のような雰囲気も。不思議な物語でした…
●亡くなった父親の遺品の中にいたラブドール半朱(ハンス)。言葉を話し、物語と音楽を愛し、故人のために祈る人形。礼央は彼を連れて帰り、ともに時間を過ごす。
●父親が礼央には与えず半朱には聞かせた物語や音楽を、今度は半朱が礼央と共にする。父親から与えられなかったものを半朱から受け取るというのは、どういう関係性なのか。
●一方で、半朱はラブドールとして抱かれたことがなかったという。父親が抱かなかった半朱を礼央が抱く。「抱かれれば思い残すことはない」と言う半朱。そこに礼央に対する愛はあったのだろうか…本当に形容しがたい関係性。
●描かれている礼央と半朱の交流は、全て二人で父親を共有する行為のようで、礼央と半朱だけの関わりではなかったように思える。とすれば…この物語のラストは、ようやく二人の中で父親との区切りがついたということになるのだろうか。
●これから礼央は半朱をどうするのだろう。ここから築けるのがようやく二人だけの関係なのでは?父親が半朱に与えたように、礼央も半朱に何かを与えるのだろうか。そうしながら救われるのはきっと礼央の方なのかも。父親がそうだったように。
●軽く手に取ってみましたが、考えることが止まらなくなる短編でした。(抜け出せない)
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