ミステリと言う勿れ
」のレビュー

ミステリと言う勿れ

田村由美

ぐっと引き込まれる、ぐさりとくる言葉たち

ネタバレ
2022年3月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「ケアするべきなのは、いじめ被害者ではなく加害者の方」という話や、職場での女性の扱われ方など今まで甘んじて受け入れてしまっていたことを改めて「それっておかしくない?」と言ってくれることがとても心に沁みます。
あらゆる場面で、「普通ってこうだよね、でも○○じゃない?」と、今まで自分が無意識に当たり前と思ってしまっていたことを具体的に指摘してくれるので読むたびに新しい発見や新しい感覚が自分の中でアップデートされていくようで面白いです。
違うんじゃない?と言われるのが「従来的な考え方に対して」となると、自然に年齢層の高い方に対してのアンチテーゼになりやすいのですが、これはその対象となる年齢、性別の方が読んだらどう感じられるのか、純粋に聞いてみたいなと思いました。
一方で、整くんは割と自分の意見の主張の仕方が強いので、反論を許さない空気があり、そしてそれはおそらくまだ明かされていない過去の体験に基づく意見が多いから自然とそうなってしまうのではないかと推察しています。まだ大学生で、今後たくさんの経験をしたらいくつかは考え方が変わることがあるのかどうなのか、そしておそらく整くんが年をとるころにはまた世代交代で若者がまた新しいものの考え方を提示してくる時に、整くんは自ら感覚をアップデートできるのか、それとも若者に指摘されるまで気づかないこともあるのか。この話はきっと代々人が考え方のアップデートをしていく中でいつも起きている物語なんだろうなぁとも思います。
大事なのは、「ねぇこれおかしくない?」と誰かが言ったら、聞く耳を持つということなんだろうなとこの漫画を読んで思いました。
ひとつひとつの出来事に丁寧に触れていく整くんの旅路を一緒に見ていくのがとても楽しいです。ガロくんのことは特別視しているようですが、先生を目指し人の心の痛みに敏感な整くんは、ガロくんのお話が本編に入った時にどんな立ち位置で何を優先していくのか、そこに注目したいなと思います。
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