MADK
」のレビュー

MADK

硯遼

愛すべき悪魔たち

ネタバレ
2022年4月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ BL歴10年くらいですが、私が今まで読んだ中で一番ドラマチックな作品でした。長年積読にしてたのを2巻まで読み終わった今後悔しています。登場するのは人間が想像するザ・悪魔な姿形をしている悪魔たちで、セオリー通り人間とはまるで違うルールや理念に則って生きている。だから人間の理屈は通用しない。だけど、そこはやはり人間(主にBL好き)に向けて描かれた漫画なので、人間らしい愛だの執着だのを盛り込んで親しみやすいストーリーになっています。何に感動したかって、キャラデザの見事さは「人馬」で知っていましたが、悪魔の造形の多様さときたら、作者は想像力/創造力の塊だな、と。巻末のキャラ設定ページの楽しいこと楽しいこと!そしてなぁ、、、個人的性癖に爆刺さりなのが「名前を呼ばれないと物理的に消滅してしまう」という設定でして…!「名前を呼ばれることで他者から認知され、他者に認知されているイコール存在証明になる」という、人類に共通するドグマ人類学的「私を私たらしめているものとは何か」問題。これを悪魔の世界観でやっちゃったら、「言葉」や「契約」や「名前」が文字通り命がけのとんでもなく大事なものになってしまった!元人間のモツオタ少年は悪魔界最上位の愛する悪魔の名前を呼んで彼を消滅から救うことができるのか!?とまあざっくり言うとそんなあらすじだと思うのですが、「言葉」に至上価値がある世界で、その「言葉」を巧みに扱える者が階級の上位にいて、下位の者は上位の者の「名前」を呼ぶことができず、無理に呼んだら身体が壊れてしまう。こんな設定、言葉オタにはたまりません。さらに良いのは、他者への愛や執着によって言葉(表された心)に乱れが生じると己を失い破滅する…。忘却による消滅か、愛を知ることによる破滅か。こんな世界をロマンチックと言わずして何と言おう。スラム街の悪魔たちは、誰も自分の名前を呼んでくれないから、忘れられないように常に大声で自分の名前を叫んでいる。私の名前を忘れないで、私がここに存在していることを忘れないで、私を認識して。という叫びなんですよね。生前のマコトはその特殊な性癖のせいで親や周りから遠巻きにされていたでしょうし、名前を呼ばれなくなって随分経っていたんじゃないかな。忘れ去られても人間は物理的には消滅しないけど、認識されない存在というのは消滅しているようなもの…。やばい1000文字だ。最後に、3巻楽しみ!
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!