オレを知らない今日の君
」のレビュー

オレを知らない今日の君

豚田もこ

「真実はいつも1つ!」とは限らない?

ネタバレ
2022年5月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ランキング上位にあったので購入してみました。初めましての作者さんの作品でしたが、とても面白くて、購入して大正解でした。最初は明るく、クスッと笑えるような温かな雰囲気から一変し、事件が起こってクラスメイトの死という急に堕ちていく感覚に鳥肌が立ちましたね。時が戻って何度も助けようと奮闘するのに、変わらない未来に胸がえぐられます。
途中までは三国視点なのに後半から小野視点に変わり、驚きの事実に呆然としますし、最終話の行動に合点がいきました。小野が導き出した答えと未来のために決断した2人が切なくも美しくて、今まで築いてきた大切なものをなくしてほしくないという気持ちと、この状況を変えて幸せになってほしいという気持ちが激しくせめぎあっちゃうほど、ぐわ〜って胸がいっぱいになって涙しちゃいました。ラストもエピローグなのにプロローグみたいで、もっと2人を見届けたかったけど、絶対2人なら大丈夫だろうという安心感もあって希望のある素敵なラストでした。
時が戻るので、当然同じシーンがあって、またか…と思っていたこちらの意表を突く展開が用意されていますし、何よりストーリー運びが非常に巧です。私も同じ目線で物事を見ていたつもりが、それが虚像で、実は反対側にあった!と思ったら、どれが真実かわからない…みたいな迷路にいる感覚になります。緊張感も切なさも苦しさも嬉しさも感動も、全て心を鷲掴みにする作者さんの力量に驚きました。
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